渡辺誠一郎(わたなべ せいいちろう)氏 (LivingImage)



渡辺氏略歴
MediaTek Inc. CTO。慶應義塾大学工学部卒。『人に直接関わるモノ作りに携わたい』という思いから、日立メディコに就職。高速デジタルシステム設計の標準化作業を主導 し、またハードウェア設計者として CT スキャナ用高速画像処理装置、心電計、心音自動分析装置、および医療サービス向けの分散データベースシステムなどを開発した。10年目にインテルジャパン 株式会社に転職し、開発者として数々の要職を歴任。同社に在籍した 12年間に、Network Product Division、DVI Evangelize Team (コンピュータビジョンの新しい製品企画)、ASIC Design Center and Quality Control Department などを指揮した。続いて、コンピュータビジョンを扱う日本の新興企業、株式会社ゲンテック(GenTech)。同社では、ベンチャーキャピタル数社から 200万ドルの資金を調達、Vector Quantization をベースにした圧縮アプリケーションの開発や、イスラエルの企業との提携による 3次元認識システムの開発などを担当した。その後、自らの商品を製造販売するべく、NuCORE Technology Inc.を立ち上げた。NuCORE社は2007年、台湾の半導体メーカーMediaTekによって買収され、現在同社のCTOを努める。 さらに同年、新たなベンチャー企業LivingImage社を立ち上げ、ボードメンバーとして活躍中。
 


Q:現在は、メディアテック社とリビングイメージ社の二社をマネジメントされていると伺いました。

ニューコア社を2007年にメディアテック社に売却してからは、メディアテック社において経営陣としての参加はしていません。現在は主に技術のアセスメントを担当しています。リビングイメージ社では、ボードメンバーの一人としてマネジメントにも参画しています。

Q:リビングイメージ社はいつ設立されたのでしょうか?

リビングイメージ社の前身としての活動自体はアドホックに2002年頃から始めていましたが、会社として実際に立ち上げたのは2007年の3月で、本社は渋谷にあります。

Q:リビングイメージ社を立ち上げたきっかけは何でしょうか?

もともとNuCOREでは、画像処理専門のチップを販売していましたので、映像の「美しさ」に強いこだわりを持って開発してきました。最終的に製品ユー ザーは、パソコン、携帯電話などの画面で画像を使うわけですよね。そうなると、画像の「きれいさ」だけではなく、その画像をどう演出するか、といったニー ズがあると考えました。その様な市場のニーズを感じていた頃、リビングイメージの創業メンバーの一人が、写真を映画のように見せる「Life with Photocinema」というコンセプトのソフトウェアを発想し企画したのです。パソコン上で、静止画を自動的にピックアップして、動画のように再生す るソフトで、音楽と画像の動きを絶妙に組み合わせる技術を持っています。画像編集ソフトは色々ありますが、素人が自分で取った映像や写真を、既存のソフト で上手く編集するのは非常に難しいですよね。それを誰にでも簡単に、プロ級の編集ができるソフトを開発し、提供することが市場のニーズに対するソリュー ションだと考えたのです。

Q:チップの開発を手がけられていた頃から、ハードだけではなく、ソフトの開発についてアイデアをお持ちだったのですか?

ソフトのニーズについては認識していましたが、それ自体をビジネスの中心にすることをずっと考えていた訳ではないですね。NuCOREでは私は完全にチッ プ屋でしたので、当初、画像処理のチップを拡販する為にそのソフトウェアのテクノロジーを使うことを考えていました。デジタルカメラの一機能として組み込 んでみたのですが、ビジネス的には不正解でした。というのは、カメラメーカーにとってみれば、画像の美しさで勝負していると考えていますから、ソフトの部 分でユーザーのニーズを発掘するというカルチャーが当時は全くなかったのです。また市場もスペックシートで表現される機能の高低で左右されていました。し かし、このソフトウェアをスペックシートに書くと、本来の趣旨を失った、ただの「スライドショー」になってしまうのです。でもこれはスライドショーじゃな い。この技術の肝は、プロの編集技術が、素人でも利用できます、というところにあります。しかし当時は、メーカーも画像チップ開発者である我々も、新しい マーケット分野でしたので、どのようにマーケティングしていいのか分からなかった。そこが結局上手くいかなかった理由だと考えます。結果、アプリケーショ ンソフトウェアを中心にマーケットを考えていく、という新たなビジネスを展開するために、リビングイメージ社を立ち上げたのです。

Q:今、リビングイメージ社のビジネス戦略として考えられているのはどういった事でしょうか?

我々の事業を含め、すべてのソフトウェアビジネスが完全にネット対応できるかどうか、という点が重要になってきています。YouTubeが出てきてから、 映像を扱う世界が激変したと感じます。彼らは、ネット上の映像・画像の世界に、穴をポンとあけてくれたような存在で、あとは、それを誰がどう伸ばしていく かという競争になってきていますよね。我々も、やはりネット戦略を訴求しています。

Q:当初考えられていた画像処理チップを販売したいという方向から、画像編集ソフトウェアの販売へとは、分野が随分変わってきていますよね?

もう180度転換ですね。ですので、リビングイメージという別の会社を作ったのです。そもそも目的が違いますから。ハードの基点で考えると、画像処理チップのようなものに結実するのですが、ソフトの視点で見ると、同じアイデアでも別の展開ができるわけです。

Q:一般的にエンジニアの方は、発想を逆の方向に持っていくのは難しいというイメージがありますが、渡辺さんはそれを可能にしたというのは、何か秘訣などあるのでしょうか?

私もまだまだエンジニアですので、発想を転換するのは容易ではありませんよ(笑)。ただ、自分の中で思考を変えることを受け入れ、それを楽しめる素養はあ るのかもしれません。あとは、もう様々な人との付き合いによるものだと思います。自分の属している業界だけではなく、異業種の人と付き合うという事は非常 に大事ですね。訳の分からない人と付き合っていると、面白い発見が沢山ありますよ(笑)。

Q:ここで、もう一社(メディアテック社)についてお聞かせ願います。過去に遡りますが、1997年にニューコアテクノロジー社を設立されて、2007年にメディアテック社に売却されていますが、売却のお話はいつ頃からあったのでしょうか?

2006年ですね。その時、ニューコア社を立ち上げてからちょうど8年目で、その間に$80Mの資金を調達し、売り上げは$20M近くまで伸びていまし た。VC(ベンチャーキャピタル)からの出資を受けていたのですが、VCは7年ぐらいで償還、つまりファンドを精算しなければならない時期にきていまし た。IPOの市場状況も悪化し困難でしたので、良い買い手がいたら売ってしまえというVC側からの現金化圧力がかかっていました。そのVCの圧力に対し て、我々ニューコア社の経営陣は、会社や景気の状況を考えると、そう簡単には対抗できませんでした。それが売却に至った要因の一つです。もう一つの要因 は、予定していた次世代チップの出荷が大幅に遅れた事。これによって売り上げの落ち込みが予測された事。 当時の主力製品がいつまで売れ続けるのかが怪し くなって来た事。 我々の行っていた事業はB to BよりもB to Cに近かった。要するに、VCを含む投資家がB to Cのビジネスに対して、勝ち戦もしくは負け戦の経験値が少ない。そうすると投資家は出資先企業の将来がよく見えなくて怖い。ニューコア社のボードメンバー は、半導体を作る上での勘は優れていたが、コンシュマー向け製品のマーケットの動き等に関しては初心者に近かったため、尻込みをしてしまったのです。

Q:ニューコア社を売却する際、創業時に考えられていた事業計画や売り上げの目標などは、ある程度達成されていたのですか?

めちゃくちゃです(笑)。当初の事業計画なんて、創業1年半ぐらいで全部飛びました。もともと創業時の事業計画は、デジカメではなく、人間の視覚をエミュ レートするチップ、認識チップを開発しようとしていました。今では認識チップの市場が大きいことはよく知られていますが、1997年当時は市場がニッチ過 ぎて、ミリオンのオーダーが見えなかったのです。工業用や、セキュリティーカメラなど、認識チップのニーズはありましたが、大きな市場として捉えることが できなかったのですね。VCにビジネスプランを見せると、「面白そうだ」と興味は持ってくれましたが、ミリオンのオーダーが見えないという所で出資はNG になったのです。

同時期にカシオが、最初の量産型デジタルカメラを出したばかりで、これはビジネスになるな、という直感が働いたのです。その後、認識用のチップと言わず に、デジカメ用のチップを作ります、という内容でビジネスプランを書き換えるとVCはすぐに動いてくれました。とは言え、10社ほどのVCを回って、それ に興味を持ったのは2社だけで、他からは、デジカメなんて流行るわけないと言われましたけどね(笑)。

Q:アメリカのベンチャーキャピタルから資金調達に成功されたわけですが、経営陣が日本人である事でハンディは感じられましたか?

日本人としてのハンディは沢山あったと思いますが、気にしていなかったですね。会社を起業するに当たり、トップクラスのVCに、選択的にぶつかろうと思っ ていました。世界で最も評価の厳しいところに見てもらい、それで賛同者がでるような事業であれば、会社を始めてみようと起業の判断基準に設定していまし た。資金調達も重要でしたが、まずはビジネスプランをバリデーションしてもらいたかった。結果、Mohr Davidow VenturesやGordon Campbellといった有力VCが評価してくれました。

Q:それまでに、起業されたトラックレコードがなかったわけですよね。トラックレコードがないとVCからの投資は難しい、といった不安を抱えている起業家予備軍の方が多くいると思いますが、それに対しては?

トラックレコードはみんな最初はありません。トラックレコードが無いからというのはすごく厳しい言い方をすれば、単なる言い訳ですよ。トラックレコードが なくても、魅力的なビジネスのネタを持ち込めば、VCは食いつきます。しかも、最も高いハードルのドアを最初に叩かないと、後が大変だと思います。VCか ら、ポートフォリオの一社としてちょろっと出資しておきましょう、ぐらいのノリで投資してもらっても、そんなVCからの支援はあまり考えられないですし、 自分達自身のバリデーションにもなりません。世間に対するバリデーションをしてもらう一番いい窓口は、トップクラスのVCからの評価だと思います。

Q:VCとの接触は、どのように実現したのでしょうか?

私はその当時インテルにいましたので、色々お世話になった元インテルジャパンの社長の所に行って、今度新事業を立ち上げようと思いますと説明したところ、「とんでもない事やるね」(笑)と言われましたが、その社長から最初の糸口となるVCを紹介してもらいました。

Q:日本で資金調達をする事は全く考えられなかったのでしょうか?

全く考えませんでした。日本では、半導体ベンチャーの起業をバリデーションできない環境だと思ったからです。当時半導体系ベンチャーの成功や失敗の経験値 が少なかったので。早い段階で、シリコンバレーのVC、しかも最高ランクの所を選んでぶつかって行ったことが、ニューコア社が生き延びてきた要因の一つだ と思いますね。そういったVCは新しい動きに敏感で、例えば、「まだ市場に全く出ていない半導体ツールメーカーがある、そことやればうまくいく」とかアド バイスをくれます。そういった、経験値の高い人達でできたネットワークはやはりシリコンバレーにはたくさんありますよ。半導体系のベンチャーにとって、そ のシリコンバレーのメリットを活かすことが出来るのは、日本と比べて大きな魅力です。

Q:シリコンバレーのメリットを追求しているのは競争相手にも言える事であって、ビジネスの環境としては結果的に厳しくなるという面もあるのではないでしょうか。

もちろんその通りですね。シリコンバレーに来てから、そういったリスクは目の当たりにしました。技術的なデューデリジェンスが一番危険ですね。シリコンバ レーでは、VCへのビジネスプランを説明する際にNDA(守秘義務契約)は殆ど交わしません。交わしたところであまり意味はありませんしね(笑)。私は、 ニューコア社を作った時に、我々と全く同じコンセプトで別の会社を2社作られるという経験をしました。プレゼンに行ったVCから情報が出たのでしょうね。 更に、少し落ち目気味になっていたとは言え、当時グラフィックスで一世を風靡した会社が、私のプレゼン後、社内プロジェクトチームを作り、同様のデジカメ 用チップを開発していた、ということを知ったこともありました。いずれも失敗に終わったみたいですが、情報漏洩のリスクはかなり高いですね。起業家からす れば、自分たちの情報を開示して投資家を説得しない限りお金は入ってこないですし、「そこは内緒です」と断ったら、「じゃあいいよ」という話しになる (笑)。逆に考えると、技術やアイデアを誰にも盗まれないという事は、自分の狙いが間違っているという事になるかもしれないですけどね(笑)。

Q:そういったシリコンバレーの厳しい環境の中で今まで勝ち抜いてこられた事は、どういった強みに起因したと思われますか?

最初のビジネスに対する評価を受ける時に、単なる自分の思い込みではなく、客観的にバリデーションしてもらったという点が一つ。もう一点は、自分のやろう としていることを本当に面白い、好きだと思ってくれる良き仲間に恵まれたことだと思います。好きというのは、チップを開発する事が好きというよりも、最終 目標である「画像をきれいにする」というところに没頭して、その過程そのものに対して生理的な楽しみを覚える人達(笑)。これは大事なことですよ。それか ら、仕事をしていく上で、必ず上手くいかなくなる状況に直面します。技術的な失敗や、社外との協力関係のこじれ、社内の人間関係問題とか色々あるわけです が、失敗の連鎖といいますか、思い通りにいかないのがスタートアップでは普通ですからね。または、経営が上手くいかない状況にいると、他からたくさん誘い がくるわけです。こっちはもっと面白いぞ、来てみないか、みたいなね(笑)。メンバーの中には痺れを切らしてそっちに行ってしまう可能性もある。チームの 根本の所で、「今の困難な状況を何とかして乗り越えるんだ!」という強い結束がないと、チームもビジネスもばらばらになりますよね。我々は創業時のメン バーが全員残ってやってきましたから、それが強みになっていたのだと思います。

Q:創業メンバーの方は全員がエンジニアだそうですが、マネジメントなどもエンジニアの方が行ってきたのですか?

僕は最初から、自分たちにはマネジメントの能力がないと踏んでいましたので、シリーズAで投資をしてくれたVCに、CEOを連れてきて欲しいと頼みまし た。創業時のCEOはとても良く働いてくれましたが、会社の成長ステージによって、それに見合う能力の持った人材を使わなければなりません。ですので、途 中でCEOを変えたりしました。そういう時に辞めてもらうのはえらく大変ですけど(笑)。本当に大喧嘩です。会社の存続を考えると、創業者である僕を切る か、雇いのCEOを切るかの二者択一なんです。結果的には、そこは譲らなかったわけですけど。

Q:マネジメントを外部の人材に任せるかどうか、という問題では、日本とアメリカのカルチャーの違いがあると感じます。日本の社長さん は、自分の手で会社を大きくしていくんだ、という傾向が強いですよね。会社の規模などによって能力の限界があるという事実に対して、どんどん新しいCEO を雇うという概念は日本にはあまり見られません。

全然ないですね、本当に。もう理解の範囲内にすらない。でも実際は、CEO職は非常に特殊な職業ですよね。本当に特殊技能者です。それをエンジニアに兼ね 備えろというのは非常に困難であると思いますね。けれども人というのは環境によって変わるものですから、エンジニアから立派な経営者になった人ももちろん いらっしゃいます。私の場合は、自分はそうはならないだろうと踏んでいましたので、先述のような取り組みを実行したのです。

Q:日本で起業する際のメリット、デメリットについてはどのようにお考えになりますか?

業種にもよりますけど、半導体系でしたら依然としてアメリカ、特にシリコンバレーに大きなメリットがありますね。日本では半導体系ベンチャーの起業は非常 に厳しいと思います。また、ネットサービス系の一部もシリコンバレーが強いでしょうね。というのも、Googleという大きな渦がここにはあって、そこと 同じ空気を吸うというのはネットサービス系のビジネスにとって、非常に大事なことだと考えます。

Q:日本の企業環境を一つ変えられるとしたら、どこを変えるべきだと思われますか?

現に日本で変わりつつあるのは、「終身雇用は幻想だ」という認識ではないでしょうか。終身雇用を軸にしたモチベーションでの従業員のキープの仕方に、若い 人達から順繰りに、何も魅力を感じなくなってきている。これは非常にいいことだと思いますよ。終身雇用の幻想は、もう日本人のDNAに組み込まれているの ではないか、というぐらい長く重い問題のような気もしていましたから、若い人達によって日本企業のカルチャーが変わっていくのは本当に良い事です。それか ら、日本の強みとしては、粒ぞろいの人が多い、という事ですね。日本人の能力のスペクトルパターンは、真ん中にぐっと殆どの人が集まっているきれいな正規 分布のイメージです。日本人はみんなが多能工なのです。一方、アメリカは真ん中がなくて、平たい台形のような形になりますね。アメリカでは、仕事が細分化 されていて、それぞれのパートにスペシャリストがいる。ですのでアメリカでチームをつくると1.5倍から2倍人数がいる、言い換えると無駄が多い。 だか ら、明確な目標があって、やる事をブレイクダウンできれば、日本でチームを作る方がよっぽど効率的です。過去の日本企業が強さを発揮してきた時代は、それ を象徴していたと思います。でも今は、今までの旧態依然のアセットが凄い勢いで崩れていっていますよね。例えばメディアでも、YouTubeみたいなもの がどんどん台頭してくると、放送局の価値が相対的に薄れてくる。電波利権を持っているからという理由で安住できていた世界が、根本から短期間で崩れようと している。こういう状況においては、最初はアメリカが非常に強い。アメリカ人は変化の匂いを嗅ぎ付けると、わーっと一気呵成に集まって、パラダイムを作っ てしまう特殊能力があります。日本はあらあら、って言っているだけで何も行動をおこさない。先端部分はアメリカ人に食い尽くされてしまいがちです。でもそ ういう流れが、ある程度公式化されて整理できてくると、日本人は強いと思います。ただ、昨今は同じような能力を持っているアジア勢との戦いも厳しくなって きていますけどね。ひとつ変えられるとすれば、多様性を寛容するカルチャーを持つ事。先端部分は試行錯誤でしか創造されないと言っていいと思います。言い 換えれば従来の尺度では計れないアイデアを実行できる人材を排除したり潰したりしない、という事です。シリコンバレーの無駄は実は無駄でない、ということ ですね。

Q:今、こちらで注目している技術トレンドはありますか?

最近はやはりエコ系が多いですよね。エコロジー的に正しい方向で新しいチャレンジをする所には色々リソースが集まってきます。実際、半導体はもう過去の産 業に近くなってきていますよね。エンジニアが、大勢で競争しながら半導体なんて難しいもの作っていても、薄利多売で全然おいしい事ないですしね。それより は、これからは新しい太陽電池の開発だって事になる。事実最近シリコンウェハーの需要が太陽電池にシフトしているそうです。こういうエコ系の仕事をしてい ると、家族や友達にも自慢できるんですよ、俺のやっている事は地球を救うんだって(笑)。

Q:特にシリコンバレーには、クリーンテックなどの新しい時流に積極的に自ら乗りたがる人が多いような気がしますが?

まさにそうですね、そこが一番のシリコンバレーの特質ではないでしょうか。だからシリコンバレー全体で極めてすばらしいマーケティングをやっているんですよ、全世界に対して。

Q:シリコンバレーに新しい流れを生み出すには、誰が重要な役割を果たしているのでしょうか?

シリコンバレーでは、基本的にはビジョナリーが明確化したものに対して、資金源がそれにシフトしていく。資金源がシフトすると、働く人もシフトすることに なる。こうして新しい生態系全体が作られていきます。ですので、ビジョナリーをすごく重視する社会でもありますよね。ビジョナリーがいつも起源なのか、と いえば必ずしもそうではなくて、世間の空気を上手に吸収した人がスピークアウトすると、ティム・オライリーのweb2.0の時みたいな事が起こるわけで す。

ちなみに日本で同じ事をしても、一大ムーブメントになるどころか、逆につぶすエネルギーの方が大きくなると思いますよ。シリコンバレーが生み出すような新 しい生態系は、既存のシステムに対して破壊的ですからね。だから、先程の「日本のどこを変えたいか」の質問の答えじゃないですが、もっとシリコンバレーに 日本人は来るべきだと思いますね。日本を相対的に見られるような視点を持てる人数を増やさないと、日本はあまりにも狭い世界に浸りきっている感じがします ね。特に、今みたいなグローバル化の時代において、現在の日本の状況はリスクが高いですよ。だからSVJENは、なるべく多くの日本人をだましてでもシリ コンバレーに連れてこないと(笑)。それに、色々な価値観を持った人と接すると多様な視点を持てますしね。これは、国として取り組むべき事だと思います よ。

Q:渡辺さんの活動拠点は、これからもずっとシリコンバレーで、と考えていらっしゃいますか?

あんまり考えていないですが、Googleが元気なうちは、そばにいようと思います(笑)。Googleとも仕事をしていますし、リビングイメージ社は、 Googleのオープンハンドセットアライアンスのメンバーでもありますので、ビジュアルリテラシーとネットリテラシーの部分でお手伝いさせて頂いていま す。

Q:最後になりますが、これから将来に向けて、どのような活動をされていきたいですか?

基本的には、映像で人々が繋がるような世界を創っていきたいと思っています。例えばSNSで見ても、文章が主体であって、言語でしか繋がっていないですよ ね。そうなってくると、言語の壁、というものにぶつかる。Mixiは何となくまったりしていますが、Facebookに行くと、雰囲気がまるっきり違う。 すなわち、言語別にそれぞれのコミュニティが出来上がっています。しかし、ここまで、ネットやチップが発達しているのですから、テキスト(文字)だけじゃ なく、直感的なコミュニケーション、映像によるコミュニケーションを使えればいいな、と思います。DJやVJ(ビデオジョッキー)達と話をしていると、ま すますそう思いますね。彼らは世界が広いんですよ。僕の友達のDJは、英語が得意なわけではないですが、アメリカでもどこでも、音楽を使って外国人とも盛 り上がれる。VJも同じで、彼らは映像を共通の言語にして、世界中に友達を作ることができる。世の中が、言語を使わなくても人々が繋がることが出来るよう なテクノロジーレベルに達している、と確信しています。そこで、我々のようなエンジニアとクリエータ、マーケッターが寄り集まった集団が、これからは活躍 出来ると考えているのです。映像編集のセンスの事を「ビジュアルリテラシー」と呼んでいますが、ビジュアルリテラシーの完成度を上げることを、我々がお手 伝いする事で、ユーザーの皆さんに何か提供できれば嬉しいです。テーマは「画像を遊ぶ」。「ビジュアルリテラシー」と「ネットリテラシー」を融合させる場 所が、我々の新しいステージだと考えています。これから、そのステージで自分たちのビジネスを展開していきたいと思います。


(聞き手:山本愛、八木誠吾、ラッキーみちる)


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