MediaCraft LLC 高坂 悟郎 氏
高坂 悟郎 (こうさか ごろう) 氏 [略歴]
東京都出身。電気通信大学情報工学部情報工学科卒業。1991年~2001年まで、デジタルビデオ機器メーカー IDK Corporation に勤務。94年、結婚、そして、二女の父親になる。2001年、渡米を決意。2007年まで IDK Technologies, Inc. の社長を勤める。3年前に設立したMediaCraft LLC では複数のオンライン・ショップに特に力を入れ、2002年からはじめた 『シリコンバレー地方版』 のホームページや 『キッズ・オン・ザ・ネット (Kids on the Net) 』 のブログの著者でもある。
個人的な話から始めるのは恐縮だが、このインタビューを含めると高坂悟郎さんにお会いするのは3度目だった。初めてお会いしたのは、今年2月半ば、パロアルトで SVJEN のスタッフが集まって、新メンバーでの顔合わせも兼ねて、食事することになった日だった。食事が終盤にさしかかったとき、その日、Facebookに取材へ行ったことを話し始めた高坂さん。 「それって、地方版?」とほかのスタッフ・メンバーから聞かれると、「そうそう、社員食堂のね」 と答えて話を続け、たまたま同じ日に、SNS (Social Networking Service) として知られる Facebook のカフェテリアを訪問した日と SVJEN のメンバーで集まる日とちょうど重なった、とのことだった。 『地方版』 とは、高坂さんが編集長を勤めている、シリコンバレーのローカルニュースをほぼ毎日更新しているウエブサイト 『シリコンバレー地方版』 (以下、地方版と書く) のことだ。後日、掲載された 『社員食堂訪問レポート』 を拝見すると、「初めてのうさぎを食べる事になるとは思いませんでした」と昼食を食べた感想が書かれてあり、「うさぎちゃん」を食べている編集長の顔がつい浮かんでしまう。
2度目にお会いしたのは、3月21日に行われた JTPA (Japanese Technology Professionals Association) のカンファレンスがあった会場だった。ステージを正面に、最前列で聴講していた高坂さん。休憩時間に目が合うと、軽く会釈をしてくださった。それから4ヵ月が経ってSVJEN のボードメンバーとして、このインタビューを引き受けてくださることになり、また、お目にかかった。前々から、高坂さんとゆっくり話せる機会があったときは、mcraftgifts.comで販売しているウッドクラフト (木製のアメリカ風の家やお店の置物) のことを伺ってみたい思いがあったので、正直、インタビュー当日が待ち遠しかった。200種類以上もあるミニチュアの建物をデザインしているBrandy Wineの商品は全て手作りで、名前や記念日、メッセージも入れてもらうことができ、高坂さんが経営している メディア・クラフト (MediaCraft LLC) が代理店として販売している。この日のために、ご自宅からわざわざ持ってきてくださったのだけれど、サニーベールにある高坂さんのオフィスに着くと、4つのウッドクラフトが並べてあった。 「オンラインで(商品を)見る以上に、かわいいですね」としか返す言葉がなかったくらい、実物は購入しようかどうか躊躇していた気持ちを一瞬にして吹き飛ばしてしまうくらい、ひとつひとつがしっかりとできていて、色も鮮やかに丁寧に塗られた作りだった。
前置きが長くなってしまったけれど、今回、高坂さんとお話をして、シリコンバレーに移住することになった経緯から現在に至るまでの過程を伺ったとき、「シリコンバレーというと、世界を見ている感じがするけれど、地元の商店街のおじちゃん、おばちゃんたちと一緒に、その人たちをうまくつなげていけるようなことをやっていきたい」とおっしゃっていたのが、とても印象的だった。家族と過ごせる時間を大切にしながら、子供のために必要な教育に目を向けて、生活を積み重ねていく。「アメリカで子供を育てたかった」という思いがあって、それを実行するだけの行動力と海外での生活に適応できる柔軟性を持ち合わせていたのだと思う。「ここで教育を受けたことがなかったから、子供といっしょに小学校から通うつもりで英語を習った」と言ってのけてしまう、娘の話をすると父親の顔になる高坂さんが、やっぱり、素敵に思えた。
--------- なぜ、渡米先にシリコンバレーを選んだのですか?
当時、勤めていた会社がアメリカと貿易する会社で、そのころ、2ヶ月に1回くらいのペースで定期的に海外出張に来ていたこともあり、日本でしている仕事をここで始めてもそう変わらないような気がして、2001年に会社に勤めたときの当時の上司に相談して、その子会社を設立するために、シリコンバレーに来ました。Eビザ(*)で入国して、のちに永住権を取りました。
あと、アメリカで暮らしてみたい思いが強くあって、特に、子供にアメリカの教育を受けさせてみたいと思っていたので、結婚する前から妻に、「俺と結婚したら、多分、将来、アメリカに行くことになるよ」と、ちょっとエバっていたんです(笑)。上の娘が小学校に上がる、そのタイミングに合わせて、家族といっしょに移ってきました。
(*) Eビザ ・・・ アメリカとの貿易、またはアメリカで投資を行う場合に米国大使館で申請が可能なビザのこと。
--------- 『地方版』 を始めることになった、そのきっかけ。
シリコンバレーに住んでも、日本のテレビ番組を見て、日本語のウエブサイトを見て、日系のスーパーに行く、ほとんど日本にいるのと変わらない生活をしていて、ここでの大きなニュースは日本語のニュースを通じて知ることができるけれど、周りのことが全然、情報として入ってきていなかったので、妻のために、というのがきっかけです。私が新聞を見ながら、「地元のスーパーが開店するとか、税金が上がるとか」って、記事を読み聞かせ続けていて、それでウエブサイトを作ることにしました。
--------- 高坂さんの起業家に対するイメージとSVJEN での活動について。
私のイメージなんですけど、「起業家」というのは、まず、ビジネスの仕組みを作って、そこで人を雇い、自分が汗水流さなくてもお金を作ることができた人のことを言うんだと思うんです。私の場合、ただ個人事業で自分の時間を切り売りするようなビジネス・タイプなので、私自身、「起業家ではない」と思っているんです。
だから、桝本さん (President/CEO of B-Bridge International, Inc.) から SVJEN のボードメンバーになる誘いを受けたとき、一度、お断りしているんです。でも、シリコンバレー特有のイメージというか、ハイテクでベンチャー・ビジネスである必要がないなら、仮に個人事業のビジネスでもいいと認めてもらえるのなら、ここにいる日本人で私みたいな人はたくさんいるので、そういう人たちが集まって情報交換しながら、お互いサポートし合えるようになればいいと思って、このメンバーに加わりました。
サニーベールの商工会議所で会っている地元の人たちと、お互いのビジネスをサポートし合えるように情報交換をもう3年ほどしていて、そこでうまくいっているのを見てきたので、日本人のネットワークでできないはずはないと思って、SVJEN でもそれをやっていきたいと思っています。
--------- MediaCraft LLC での事業について、聞かせてください。
主に非ハイテク系のスモールビジネスがウエブサイトから利益をあげるためのお手伝いをしています。ウエブサイトから利益を上げると言っても、Eコマースのような直接的な方法だけでなく、顧客獲得、カスタマサポート、広告宣伝などのビジネスの形態にあったやり方でウエブを活用し、ウエブサイトをエクスペンスではなくインカムとできるよう、コンサルティングを含めてお手伝いしています。見栄えの良いウエブサイトを作るだけではなく、このビジネスはどうやってお金を回収し、どういうタイプのユーザがいてということを理解しながら、求められているウエブサイトを作っていく作業は、楽しいですね。
長い時間をかけてクライアントと話し合っても、「今、ウエブサイトをやる時期ではありませんね」ということになることもあるのですが、それでも、時間をかけて面談した上で、トップページにこの商品が行き着くようにしようとか、ウエブのデザインも使えそうなアイディアを引き出しに入れておいて、ここであれを使ったらうまくいくかなとか、全体の流れを考えながら、その仕事をするのは好きです。
--------- あのフレーズは、どうやって生まれたのですか?
メディア・クラフトのホームページにある「あなたのビジネスウエブサイトは仕事をしていますか?」というのは、商工会議所で生まれたものなんです。毎回、顔を合わせていても、必ず最初に30秒の自己紹介があって、そこで皆から、「もっと、こういうふうに言ったほうがいいよ」とアドバイスを受けて、あのフレーズが生まれました。
最近、そこでよく言っているのが、「あなたのウエブサイトを探すのは、何というキーワードで探せばいいですか? そのキーワードを入れたとき、あなたのウエブサイトがちゃんとトップページに出てきますか?」と言うと、説得力があるので、それを使っています。
--------- 新しく取り組み始めたこと。
商工会議所でであった、ローカルのビジネスをしている人に、日本人以外の人がたくさんいるので、その人たちを紹介していきたいと思っています。(地方版に、『安心して利用できる、シリコンバレーの非日系地元サービス』で公開中。)シリコンバレーに住んでいる駐在員の人の多くは、まず日本語が通じるし、そのほうが安全という気持ちがあるので、日系の人を選ぶと思うんです。実際、そうだというのを知っていることと、その一方で、商工会議所で会う地元の人からはよく、日本人のコミュニティーにどうやってアプローチしていいのか分からないという相談を受けていて、それで、ここからうまくビジネスに結びつけば、と考えています。
--------- 高坂さんの休日の過ごし方。
だいたい家族といっしょにいることを考えるので、そのとき、子供がハマっているものを家族全員でハマって過ごしています。
--------- 親として、子供のためにできること。
「アメリカの教育を子供に受けさせたかった」という思いがあって、移住したけれど、私がこっちの学校へ行ったことがないので、全然、勝手が分からないので、娘が通う学校のことをできる限り、知ろうと努力しています。学校の行事に参加したり、子供と登校して、校長先生や担任の先生と話したりして、学校でどういうことをやっているのか、それを親もいっしょになって学んでいます。あと、学校行事に興味もあるので、先生方と相談して、3ヶ月間、週に1回くらいのペースでクラスを持たせてもらって、昼休みに興味がある生徒を集めて、パソコン教室をやったこともあって、そうやって、学校でどういうことをしているのか、知る努力をしています。そうして学んだ事をまとめて、これからお子さんを連れてアメリカ生活を始める日本人の方達と共有できるような仕組みが作れたらと思っています。
(聞き手: ラッキー みちる ・ 佐瀬 弓枝 / 筆者: 佐瀬 弓枝)


