久保 渓(くぼ けい)氏

久保 渓(くぼ けい)氏

【略歴】
-1985年生まれ、長崎県出身。 長崎の公立高校卒業後、アメリカの大学へ進学。
-Carleton College を2010年6月卒業。Political ScienceとComputer Scienceのダブルメジャーを取得。
-PHP,JAVA,Python,Ruby,Perl,Javascriptを用いたウェブアプリケーション開発実績多数。
-06年09月に運営を開始した地域SNS長崎!長崎!(http://nx2.jp/) は、長崎最大のSNSで月間アクセス数は10万強(06年11月には月間70万アクセスも記録)。
-07年07月に開発したオンラインウェブデザインツールのCSSEZ(*他企業へ譲渡済)は、バイラルマーケティングの結果、約1200のはてなブックマークと10,000弱のユーザーを短期間で獲得した。また、Slashdot や@IT 、Biz.ID 、W3C など日本国内外の多くのサイトで取り上げられた。その後ユーザーコミュニティと連携し、現在日本語と英語の他、フランス語、中国語、フィリピン語の5ヶ国語に対応している。
-2007年よりW3Cの翻訳プロジェクトに参加。主にCSS関連の勧告や草案などのドキュメントの翻訳を担当。
-2008年08月に参加した株式会社はてなサマーインターン では、はてなダイアリーの下書き関連機能追加とはてなダイアリーAtomPubAPIの公開に参加し、最終成果報告会において最優秀賞を獲得。
-2008年度下期未踏開発事業採択。開発テーマ:「創造性」を共有するソーシャルウェブデザインツールの開発
-現在、fluxflex, inc.をSan Joseで起業。
  fluxflexは、コンシューマー向けのウェブホスティングサービスで、
  各ユーザーに割り当てるサーバーリソースを自動的に増減させるオート
  スケーリング技術によって、
   - 低価格($1/month~)で
   - インフラやサーバー管理の手間がいらず
   - インフラの知識がないユーザーでも手軽に使えて
   - どんな規模のトラフィックにも自動で対応できる
  ホスティング環境を提供する。
 


Q. 久保さんは日本の高校を卒業し、アメリカの大学に進学されたのですよね。
   当時からシリコンバレーで起業をお考えになっていたのですか?

 いや、アメリカの大学に行ったのは、政治家になりたかったからです。大学ではPolitical Scienceを専攻していました。政治、経済、テクノロジーの分野でアメリカが世界のリーダーシップを発揮している。アメリカの大学に行かない理由はないですよね。
 それに、私は長崎出身なのですが、長崎は田舎なんですよ。インターネットもなく、当時はパソコンなんて、なんだが恐ろしい存在でしたしね。

 

Q. ちょっと待って下さい。政治家とハイテク分野での起業がリンクしません。
   もう少し詳しく聞かせて下さい。

  簡単に言うと、Political Scienceに加えComputer Scienceを取得し、OPT期間を利用して起業しました。
 時系列でお話すると、そうですね。在学中の話しからしましょう。
 ご存知かもしれませんが、アメリカの大学は学費がとても高いんです。私は6年かけて卒業したのですが、学費や生活費で約2,500万円かかりましたね。内、1200万円の奨学金を学校からもらっていました。親からの援助も少しはありましたが、まだ1,000万円足りません。1年生の終わりには半ば諦めていました。学費を払えないから2年生に上がれないと。卒業する半年前まで、次の学期に自分がいれるかどうかも分かりませんでした。

 

Q. 1,000万を工面しながら卒業されたのですか?一体どうやってですか?

 1年生が終わった時点で、ひとまず長崎に戻りました。そこでなんとかお金を工面しないといけないと、高速バス事業をやろうとしました。が結果は失敗。資金調達もままならず失敗しましたが、その時のマーケティングツールとして地域SNS長崎!長崎!というwebサービスを手掛けたんです。これがプログラミングとの初めての出会いでした。ユーザーに喜んでもらえるのがとても嬉しかったですね。その後、サイトを作って売るということを繰り返し、なんとか学費を工面しました。ただ、アメリカでは働けないので、夏休み中は日本に帰り、その間にウェブサービスを売ったりしていました。
 
Q. なるほど。ウェブサービスの開発がきっかけで、Computer Scienceを取得しようとしたのですね?

 いや、それだけではないのです。CSSEZというオンラインウェブデザインツール等を開発していましたが、実は自分の技術に自身がありませんでした。またPolitical scienceとComputer scienceのダブルメジャーは負荷が高く、半ば諦めていたところもありました。ですが、はてなのインターンシップが転機となり、Computer Science取得に挑戦することになったのです。

 

Q. 転機となった、はてなのインターンシップ経験について教えて下さい。

 周りが優秀で、サポートしてくれる環境が素晴らしく、刺激的でした。インターン中に今まで独学だったコンピュータサイエンスの知識を系統立てて整理する事ができました。足りない知識も補充しながら、ウェブサービスの必要な知識を網羅することができたんですね。諦めかけていたダブルメジャーも、このインターンでひょっとしたらいけるかもしれないという可能性を感じました。そしてシリコンバレーで起業できるかもしれないと。インターンでの経験がなければ、ダブルメジャーを取ってなかっただろうし、今の自分はいなかったでしょう。2年半のOPTビザが使えますし、スタートアップにとっての2年半は成功か失敗かを見極める期間としては十分なんですね。

 

Q. 政治学を専攻しようとアメリカの大学に行き、卒業するとシリコンバレーで起業。入り口と出口が異なっていてユニークですね。

 まさに、「ワープ」ですよ。僕は、チャンスがある間は、ベストを尽くそうと思います。チャンスがなくなった時は仕方ありませんが、チャンスを自ら捨てるのは勿体ないと思います。次の学期に学校に通えるのかが分からなくとも、ギリギリまで頑張ろうと思い、その結果シリコンバレーで起業することになりました。後から振り返ってみるとラッキーです。

 


Q. 将来のプランは、どのようにお考えでしょうか。 

 Fluxflexは、エグジットを明確に目指しています。他社への売却ですね。
 Webサービスのホスティングのニーズはまだまだ伸びています。ホスティングマーケットにイノベーションを起こしたいですね。サーバーを用意したり、インフラを構築するには専門知識がいるんです。そのような高度な知識を持ってない人でもプロフェッショナルなインフラを使えるようにしたいです。

 

Q. シリコンバレーについてお聞かせ願います。

 シリコンバレーは、入り口の広さと通路の狭さが絶妙ですね。何かをやりたいと思っている人にとって、シリコンバレーの入り口の広さは心地よいでしょう。シリコンバレーには、チャンスがそこらへんに転がっています。例えば日本で “世界を変える”という言葉を聞くと、非常に薄っぺらく聞こえますが、ここでは現実的な言葉に聞こえてしまいます。

 

Q. 最後に、チャンスが欲しくてもがいている同年代の若者へメッセージをお願いします。

 チャンスの量と質は環境によって大きく異なるので、自分の人生を変えたければ、一番良いのはチャンスに溢れている環境に自らの身を置くことだと思います。自分の現在の状態、例えば経験や学力のなさだったり周囲の反対だったりといったものを言い訳にして、現在の環境に留まる決断をするのはとても残念なことです。挑戦しないことを選んで望んだチャンスが得られない環境でもがき苦しむくらいなら、挑戦することを選んで望んだチャンスが得られる場所にすぐにでも移動して、その環境で成長し適応するためにもがき苦しんだほうが、良い結果を得られると僕は思います。そして、たとえ失敗したとしても、挑戦せずに辿り着く未来よりも、挑戦して失敗して辿り着く未来のほうが遙かに豊かなことが多いですからね。


(聞き手・筆者:魚澤尚輝)