河東 利彦 氏

今回はシリコンバレーでありながら、ハイテクともバイオとも関係ないサービス業を自己資本で起業された河東利彦さんにお話をお伺いしました。河東さんは、日本からシリコンバレーへのリロケーションサービスを行うジャパンリロケーションの設立者であり代表取締役です。
【略歴】
東京新宿生まれ、東京の大学を卒業後不動産会社に就職、米国東海岸に五年間赴任した後に帰任せずに退社、カリフォルニアに移り1999年にジャパンリロケーションを設立。日本からの駐在員に住居の斡旋から生活全般のサポートを提供する他、法人の設立や税務などのビジネスサポートも行う。現在は、従業員10名、管理物件350件、賃貸契約年間300件をこなす。
■ 米国に来た経緯を教えてください
最初は飛行機の免許を取りに渡米しました。本当はパイロットになりたかったのですが、視力と何と言っても頭脳と金銭面で付いていけずあきらめました。免許は取得したので、いまでもたまにフライトしています。
その後日本の不動産会社に就職し、東海岸に赴任しました。5年の任期を終え、帰国することになったのですが、日本でリストラのうわさを聞き、退職しました。
■ シリコンバレーでジャパンリロケーションを起業した理由は?
東海岸に赴任している際に、よくこちらのベイエイリアには出張にきていました。当時、知り合いが運送会社で働いていており、倉庫を見させてもらったところ、日本から到着している家財道具が倉庫に沢山ありました。日本の方の家財道具が数ヶ月も倉庫に置きっぱなしになっていて、その理由を聞くと賃貸物件を探すのが困難だと聞きました。
1997年、1998年頃です。たしかに家賃が高く、現在のようにオンラインでの情報も少なく、物件数が足りませんでした。また、日本からの赴任者の方は仕事を優先させるため、家探しに時間を掛けてはいられない事情があります。それだったら賃貸物件を紹介してあげよう。と思い起業しました。
■ 起業時のビジネスプランは?
今までの不動産業でなく、リロケーション・サービスを中心とした業務とし、海外で生活されるご家族の方々の生活サポートをメインに打ち出し、ただ家を紹介して手数料を頂くのではなく、海外へ引っ越したばかりで、文化や習慣の違いで困っている事の多い皆様に生活全般のサポート・サービスを一環して提供したいと考えました。
■ 当時、米国で起業することについて、最もチャレンジングだった事はなんですか?
当時は賃貸物件を専門に扱っている会社はなく、売買の不動産エージェントの人が、片手間で賃貸物件を紹介していました。また、日本と違って仲介手数料をお客様から頂くシステムにはなっていませんでした。それをお客様から仲介料を頂くにはどうしたら良いか。仲介手数料をリロケーション・サービスフィに変えればどうかと思いました。ただ賃貸物件を紹介するだけでは手数料はもらえない。日本から赴任で来て海外で生活するには、様々な不安とそれに対するサポートが必要だと考えました。生活面からサービスを提供してあげれば、お客様はスムースに生活を立ち上げ、仕事にも専念できる。
また、家族の方々のサポート、奥様へのサポート、お子様の学校のサポート等など、細かく大変な仕事だけど、きっとお客様の役に立てると思いました。
■ 起業時には、メンターとなるような先輩の存在がありましたか?
先輩ではありませんが、こちらの地元の日本人不動産エージェントの方から、ビジネスにはならないので辞めた方が良いと忠告を受けました。日本の同僚や友人からも、会社を起したことが事の無い者が海外でそれもアメリカで起業することは、無茶な事だと皆に言われました。
■ 設立にあたっての資本金はどうされましたか?
前の会社からの退職金です。
■ 起業後の会社の沿革を簡単に教えてください
1999年4月フォスターシティで開業しました。従業員ゼロで始めました。
1999年 この一年間はこのベイエイリアのアパート、コンド、タウンハウス、一戸建ての物件を徹底的に下見し、物件カードを作りました。1999年は収入ゼロでした。
2000年 日系スーパーや日本レストランに小さいチラシを置かしてもらい、東京TVにテレビ広告を出しました。少しずつですが、お客様からの反響がありました。従業員1名
2001年 同時多発テロで、日本から来るお客様がゼロになり、わずか創業2年で会社が潰れる寸前までになりました。
2002年 オフィスをMilpitasに移転しました。賃貸契約件数年間約50件。従業員3名
2003年 二度目の経営危機。従業員1名になる。
2004年 オフィスをSunnyvale Oakmeadに移転企業訪問始める。法人向けサービスを開始、短期アパートサービス開始。
2005年 賃貸契約件数年間約150件。管理物件始める。従業員6名。JRS Grup LLC を設立、傘下にJapan Relocation Inc & Ryokan Resort LLC。Ryokan Resort LLC設立、旅館事業の本格プランニングを始める。家賃銀行自動引き落としサービス開始。光熱費支払い代行サービス開始。
2007年 オフィスをSunnyvale Down Townに移転。Corporate Housing Service始める。Corporate アドバイザリー・サービス開始。ビザ・サービス、会計サービス開始。各種保険サービス開始。
2008年 ホームページをリニューアル。お客様と物件のデータベース化を始める。
2009年 Japan Relocation News発行。
■ 現在のジャパンリロケーションについて現在の事業の規模と内容を教えてください
現在は、賃貸契約件が年間約300件、管理物件約350件、従業員は10名のスタッフで、お客様のサポート、大家さんとのコミュニケーションを行っています。
当初は、マーケットに出ている空き物件をご紹介するだけでしたが、現在は大家さんから管理を任されている物件が350件あり、日本人の人気の高いエリアで、常にお客様のご希望の物件が見つかるように心がけています。入居後も住まいにまつわるあらゆるサービスの窓口としてお客様からのファーストコールを日本語でスタッフが受け、必要に応じて大家さんや各サービス業者に連絡をします。
例えば、排水のつまりや、ケーブルテレビのトラブルなど、アメリカでは日本のような的確で迅速なサービスを受ける事が難しいため、お客様のストレスの原因になりがちです。ジャパンリロケーションでは、お客様に変わって各サービスと交渉し、トラブルが解決するまでサポートします。このサービスは大家さんにも喜んで頂いており、一度ジャパンリロケーションを通してお客様を紹介すると、その後もマーケットにださず、弊社に任せたいと言ってくださるケースが多くなっており、お客様がクラシファイドなどで探しても見つからない優良物件を沢山ご紹介できるようになりました。
引越し以外のサービスでは、各種ユーティリティの契約、セットアップ、学校教育、学区選びのコンサルティング、ショッピングや生活に必要な情報の提供などのほか、短期間だけこちらで利用する家具類のレンタルも開始しました。ウォッシュレットのレンタルが好評です。2005年よりアメリカで初めてお家賃自動引き落としサービス、光熱費代行支払いサービス、退去時の光熱費関係の清算、保証金返金送金(日本へ)も始めました。
また、日系企業のHRからも駐在員の方の住居の手配、家賃、契約期間などの管理やサポートがアウトソースできるため好評で、現在170社の日系企業様にご利用頂いています。新たに現地法人を立ち上げる企業様には、オフィス探しから税務、経理、ビザなどのサービスを提供する他、インキュベーションオフィスもご利用頂いています。
■ 不況の影響と対策はありますか?
やはり日本からの赴任者の方が激減しています。今はサービス商品の開発、ソフト面での更なるサービスの提供を考案しています。昨年は、お客様へのサービス向上のために、顧客管理データベースを特注で構築し、お客様からのトラブルへの対応状況や、契約期間、サービス内容などがオンラインで確認できるようになり、より迅速できめ細かいサービスが提供できるようになりました。また、4月からはお客様向けの月刊情報誌、ブログなどで地域のイベントや生活に関する情報を発信しています。
■ ジャパンリロケーションのこれからについて今後、拡張してゆきたい事業を教えてください
お客様への還元を考えています。更に良いサービスを考案し、実施していきます。日本に帰国されるまで、安心してお住まい頂ける様に、アフター・サービスを更に充実させてゆきたいと思っています。
また、現在ナパに和式旅館をオープンする準備を進めています。旅館ビジネスは何としても成し遂げたい事業です。日本には素晴らしい文化が沢山あります。その文化をこの旅館テーマパークで紹介しています。
いつか子供の頃からの夢だった、プライベート機専用の航空会社を作りたいです。
■ 今後、シリコンバレーで非テクノロジー系の起業をされる方へのアドバイスなどはありますか?
日本人はサービス業では世界一だそうです。きめ細かいサービス、おもてなし精神。これからは、サービスを売る、夢を売るビジネスが繁栄しそうです。
ビジネスはとにかくやってみる。思ったことは実行してみる。反対は必ずあるし、壁も絶対にあります。私は2度大きな倒産の危機に合いました。家賃も払えなくなり、冷蔵庫の中身も無くなったこともありました。うつ病になり、人生の岸壁に立たされました。さすがに二度目の危機には、会社を閉める覚悟をしていました。どん底に落ち、聖書を読み始めました。自分の力では到底無理な事も、絶対に叶うと信ずることです。
私みたいな者が会社を経営していること事態、不思議で奇跡です。資本無し、学力なし、知識なし、無能な者がこの様に事業を運営できてることは考えられません。だから誰でもチャンスはあります。要は失敗を恐れず、やるか、やらないかだけです。失敗は金銭的にも、精神的にも非常に苦しいですが 、失敗したところで、命までなくなることはありません。
インタビューを終えて
日本ではプロミュージシャンとしてバンドでギターを演奏、CDまで出していたこともあるというとても気さくな河東社長。インタビュー中、自社のサービスとスタッフについて熱く語られる様子に強い意志と熱意が感じられました。今後も、利用者へのサービスとして、英会話教室や、フリーマーケット、管理物件の日本式浴室へのリフォームなど沢山のアイデアを現在仕込み中とのことです。先進的なテクノロジーやソフトウエアをベースにベンチャーから投資を得て起業するというスタイルの多いシリコンバレーで、自己資本とアイデアだけでサービス業を起業し、ここまで成長させたお話は大変刺激的でした。
(聞き手、筆者:高坂悟郎)


