34歳の新入社員

Itoi,LLC 社長
 糸井名生(いとい・なおまる)氏

スタートアップで働き始めてから、二月経ちました。34歳にして、またしても新入社員になったわけです。転職はもう5度目。5回もすると、さすがに分かってくることもありますので、今回の転職で気をつけている、新入社員の心得について書きます。

しゃべるより聞く

新入社員には、会社について、たくさん学ぶことがあります。既存の技術、製品は当然のこと、仕事を進める手順、会議の進め方など。文書化されていない部分も多くあるので、同僚に聞いて学ばないといけません。人に物を聞く、というのは(特にプライドの高い人にとっては)、面倒だし難しいものですが、聞かないと仕事にならないので、とにかくやりましょう。

「私が前にいた会社ではこうしていた」、「学校ではああしていた」、と言いたくなることがありますが、言わない方が良いです。こういう人は「でわの海」と呼ばれますが、前にいた会社の方が良かった、と言ってるように受けとられて印象が良くありません。

エンジニアであれば、経験豊かな人でも、新しい会社に入ったら最初の一年間は勉強。口を開くよりも、じっと人の話を聞くことから始めましょう。

最初の仕事は特に気合を入れる

恋愛と同じで仕事も第一印象が大切。最初の大きな仕事をしっかりこなすと、頼りになる、と上役や同僚に思ってもらえ、その後の仕事がしやすくなります。バグ直しだったり、お客のところで起きた問題の解決に当たったり、何であっても、最初の仕事は気合を入れてやりましょう。始めたばかりで右も左も分からないのですが、分からないのでできません、と言わずに、何とか奮闘することが大切です。

自分を追い詰めない

とは言え、健康を害したり、不幸になるほどは、がんばらないほうがいいです。不幸になると、チーム内やお客とのコミュニケーションに支障をきたし、生産性が落ちます。仕事の大変な時期というのは必ずやってくるので、そのときに、もうひとがんばりできるように、心身の余裕を持っておくのも、プロとしての準備です。

私も以前の会社で、身体を壊すほど働いた時期もありましたが、長い目で見ると、心身を安定させて仕事をした方が、会社のためになります。今は、毎日昼休みに自転車に乗ったり、茶葉から入れたお茶を飲んだりして、心身の安定を保っています。

長期的目標を持つ

人間関係など、働いていれば必ず嫌なことはありますから、それをやり過ごすために、長期的目標を持ちます。何ヶ月後、何年後には、ここに到達する、という目標を書いておく。嫌なことがある度に目標を読み返して、これをするためにがんばってるんだから、明るい気持で前進していこう、と自分に言い聞かせます。

目標は、自分だけのものにせず、上司が理解してくれて、応援してくれると、もっと良いです。そういう上司を持てるかどうかは運も大きいですが、どの上司がそうか、じっくり観察しましょう。

皆と仲良くする

会社が小さくなればなるほど、チームワークの重要性は増します。チーム内に、仲の悪い人、口の聞けない人を作ってしまうと、コミュニケーションが滞り、仕事が進まなくなります。大きい会社であれば、別の人が間に入れますが、スタートアップは、コストを抑えるために、そういう余剰人員は持つべきではありません。気にいらない人がいても、喧嘩にならないように、礼儀正しくしましょう。

オフィスで寝ない

日本のオフィスでは寝ている人をけっこう見ます。お昼のあと、眠いのをこらえて仕事をするよりも、昼寝してしまったほうが、頭をすっきりして働けるので。

私も、アメリカの会社で良く昼寝していたのですが、アメリカでは職場では絶対寝てはいけない、と先輩に助言されました。どんなに頭が良くて仕事ができても、オフィスで寝るような人間はプロではない、クビにされても文句は言えない。寝たければ駐車場に行って車で寝ろ、と。

どちらが正しいか分かりませんが、とりあえず今は寝ないようにしてます。

 (糸井名生氏のブログ「柳通り便り(http://blog.goo.ne.jp/naomaru1)」より転載)

糸井名生(いとい・なおまる)氏

1973 年生まれ。名古屋大学工学部情報工学科卒。1996年に渡米し、ミシガン大学コンピューターサイエンスの修士・博士課程へと進学。電子認証などのセキュリ ティプログラムに関連する研究でPh.Dを取得。2001年、サンマイクロシステムズへの入社を機にシリコンバレーへ。アクティブカード社などを経て、 2007年4月Itoi,LLCを起業。
現在は、NextLabs, Inc.というスタートアップでエンジニアとしても活躍中。


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