「聴くという武器」

Itoi,LLC 社長
 糸井名生(いとい・なおまる)氏

聴くという武器

明けましておめでとうございます。

去年の目標のなかに、「毎日、仕事関係の本を読む」というのがありました。色々と読んだ中で、一番教えられたのがこの本。

We've Got To Start Meeting Like This! How to Get Better Results with Fewer Meetings
Robert C. Kausen

会社でする会議の効率を上げるにはどうしたら良いか、と考えて読んだのですが、会議を越えて、ひろく人とのコミュニケーション一般に、非常に役に立ちました。

本の主なメッセージは、「聴く事」の重要性です。仕事人どうしの会話・会議で、お互いが言いたいことを言いあい、何も合意に至らず、不満が残ったまま去る、ということがよくあります。この原因は、「人は、自分の話をちゃんと聴いてもらったと感じるまでは、相手の話を聴くことはない」という法則です。そこで筆者(私ではなくて Kausen)は、"Reflective Listening" という聴き方を提案します。

・相手の言うこと、立場を完全に理解するまでは、口をはさまない(はさむのは言っていることを理解するための質問だけ)
・同様に、相手が喋っているときに、自分の頭の中で、言っていることが正しいかどうか考えたり、賛成論、反論を作ったりしない
・相手が誰であっても、上記のように、相手を尊重して聴く

アメリカでは「喋ってアピールしなきゃいけない」という強迫観念を誰もが持っているので、この考え方は、大きな発想の転換でした。
この聴き方を実践したところ、会議は効率が上がり、メンバーも私の言うことを、もっと聴いてくれるようになりました。「自分のほうが立場が上だから聴け」「自分のほうが正しいから聴け」というふうに思いがちですが、「自分は君の言ってることを理解した上で、こういう提案をするから、考えてみてくれ」というメッセージのほうが、はるかに効率的です。

この本、流行していないどころか、なんと廃版です。しかし最近はアマゾンが古本を売ってくれますので、興味があれば取り寄せて読んでみて下さい。短かいし、英語は平易です。

ところで、私は、実践している、といっても、忙しかったり、白熱すると忘れてしまい、「聴いてないじゃん!」と怒られることもあります。そういうときは潔く「ごめん、聴いてなかった」と謝って、やり直しです。

 

(糸井名生氏のブログ「柳通り便り(http://blog.goo.ne.jp/naomaru1)」より転載)

糸井名生(いとい・なおまる)氏

1973 年生まれ。名古屋大学工学部情報工学科卒。1996年に渡米し、ミシガン大学コンピューターサイエンスの修士・博士課程へと進学。電子認証などのセキュリ ティプログラムに関連する研究でPh.Dを取得。2001年、サンマイクロシステムズへの入社を機にシリコンバレーへ。アクティブカード社などを経て、 2007年4月Itoi,LLCを起業。
現在は、NextLabs, Inc.というスタートアップでエンジニアとしても活躍中。


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