糸井名生氏の柳通り便り「企業理念:人の役に立つ、しっかりした技術」

Itoi,LLC 社長
 糸井名生(いとい・なおまる)氏


会社を始めて間もないころ、企業理念 - 会社が存在する理由 -を決めて、どこか見やすいところに貼っておけ、と父に言われました。迷ったとき、困難に突きあたったときに、進む方向を定める指針になるように。それで決めたのがこれです。

「人の役に立つ、しっかりした技術」

簡単な文句ですが、私なりに考えがあります。



シリコンバレーの会社で5年ほど働いて思ったのですが、会社というのは、儲けることが一番大事で、必ずしも人の役に立たなくても構いません。例えばソフト ウェアは、機能がたくさんあった方売れるのです。機能が多すぎると使いにくくなることがありますが、これを改善してもセールスには結び付かないので、改善 されない。

開発の方向を定める人が、お客さんのニーズをしっかり把握せず、「こういう物を作ればいいんじゃないかな」と適当に決めて作ったものが使い物にならない、 ということもあります。ユーザー数が少なく、売り上げがあまり期待できない商品は、そもそも開発されません。先月書いたような、自閉症の子供用のデバイス はその一例です。

大企業が利益を最優先にし、小口のお客を無視するのはしかたありません。しかし私は、小さい会社ならば、これとは違う哲学で活動することが可能なのではな いかと思います。顧客の数は多くなくても、要求をよく聞いて、しっかりしたソフトウェアを作っていけば、ビジネスとして利益を上げられるのではないか。

シリコンバレーに、サンノゼ豆腐という豆腐屋があります。小さなお店で、二、三人で豆腐を作っていますが、これが非常においしいのです。パック売りのもの とは比べものになりません。アメリカに住んでいるのにおいしい豆腐が食べられるというのは、何と嬉しいことでしょうか。小さくても、高い技術力で、お客さ んに喜んでもらえるものを作る。私がお手本にする会社の一つです。

このように考えて、企業理念を決めました。


(糸井名生氏のブログ「柳通り便り(http://blog.goo.ne.jp/naomaru1)」より転載)


糸井名生(いとい・なおまる)氏

1973 年生まれ。名古屋大学工学部情報工学科卒。1996年に渡米し、ミシガン大学コンピューターサイエンスの修士・博士課程へと進学。電子認証などのセキュリ ティプログラムに関連する研究でPh.Dを取得。2001年、サンマイクロシステムズへの入社を機にシリコンバレーへ。アクティブカード社などを経て、 2007年4月Itoi,LLCを起業。



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