糸井名生氏の柳通り便り「一年やって、良かったこと、悪かったこと」

Itoi,LLC 社長
 糸井名生(いとい・なおまる)氏


起業して一年とちょっと経ちました。上手くいったこと、いかなかったことを、次のステップに進むために反省してみます。

良かったこと:一年持った

辛い時期もありましたが、とにかく一年間、諦めずにやりました。仕事の内容は二転三転しつつも、家族を路頭に迷わせず、私も精神的におかしくもならず、無事に生活しているのが一番の収穫です。


課題:方向性が定まらなかった

仕事の中心になってほしいと思っていたプロジェクトは、最初は PhoneID、次にKeePassJ2ME、それからMyVoiceでしたが、先のふたつは既に撤退。MyVoiceもまだ柱になるほどの収益は上げて いません。マーケティングのクラスで先生が、「起業後の数年間は、自分探しの旅みたいなもの」、と言っていましたが、本当にその通りでした。まだまだ何を していけばいいのか、考え続けないといけません。

良かったこと:自分について分かってきた

自分で何でもしないといけませんし、仕事の内容を選んでいられませんので、会社にいたときはしなかったような仕事を色々しました。その結果、自分の仕事上の好みについて、分かってきたことがあります。

・やはりコーディングが好き。

・プロジェクトマネージメント、つまり仕事をする人と人との間を調整する役目は苦手だと思っていたのですが、やっていると、そうでもないということが分か りました。特に、日米間の言語・文化のギャップを埋めたり、技術的な知識を使ったり、自分の特性を生かせる場合ならやり甲斐を感じられます。

・セールス・マーケティングは苦手。この二つの重要性は、身を持って知ったのですが、自分には向いていないということも分かりました。やっていて楽しくありませんし、非常に疲れます。

課題:パートナーが欲しい

始めたときは、エンジニアリング、セールス、マーケティングと、全部自分でできる、と思っていたのですが、若気の至りでした。セールスとマーケティングは 私にとっては非常に難しい。また、何を作るかというアイデアも、残念ながらあまり良いとは言えませんでした。この部分を補ってくれるパートナーが必要だと 痛感しています。日本では素晴しいパートナーに恵まれているのですが、アメリカでもそのような人を探さないといけません。セミナーやネットワーキングイベ ントなどに参加するほうがいいのだろうなあ、と思っています。先の一年間は、2、3回くらいしか行かなかったのですが、毎月一度くらい行くほうがいいかも しれません。

良かったこと:勉強になった

新しい経験を色々し、勉強させてもらいました。

・お金を動かす仕事をする。お金を払った方が、お客は真剣になるので、無料でお客に物やサービスをあげないほうがいいです。別の言い方をすると、お金を払 うくらい真剣でないお客とは働かないほうが良い。逆に、仕事をしてもらう時は、給料を払ったほうが、責任を持ってしてくれます。

・ニッチというのは良いものである。「ニッチマーケット」というと、会社で働いていたときは、マーケットが小さいと言われているようで、あまり良い印象の 言葉ではありませんでした。しかし、小さい会社は、大企業と正面切って戦うことはできませんから、大企業が入って来ない(来れない)、自分にあったニッチ を見付けるのは非常に大切です。業種が特殊ならば特殊なほど、安定したビジネスに繋がります。

・ハードワークしてはいけない。社長業というのは、休み中でも仕事のことをついつい考えてしまいますし、責任もあるので、気疲れします。会社で働いているときのように一生懸命働くと、身体を壊してしまうので、上手く休まないといけません。

今年もがんばりますので、どうぞよろしく。


(糸井名生氏のブログ「柳通り便り(http://blog.goo.ne.jp/naomaru1)」より転載)


糸井名生(いとい・なおまる)氏

1973 年生まれ。名古屋大学工学部情報工学科卒。1996年に渡米し、ミシガン大学コンピューターサイエンスの修士・博士課程へと進学。電子認証などのセキュリ ティプログラムに関連する研究でPh.Dを取得。2001年、サンマイクロシステムズへの入社を機にシリコンバレーへ。アクティブカード社などを経て、 2007年4月Itoi,LLCを起業。



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