帰りなん、いざ

Itoi,LLC 社長
 糸井名生(いとい・なおまる)氏

SVJENで一緒にブログを書いている、岡田さんと、先日、はじめてお会いしました。なかなか背が高くてかっこいい人だったということはさておき、盛り上がったのは、起業しながらブログを書くということのむずかしさ、という話。

・仕事が進んだり、変化があると、面白いので書きたい事は増えていく
・しかし、パートナー、お客、投資家など、関係する人が増えていくので、書けないことも増えていく
・書けるか、書けないか、吟味したり、人に確認したりすることは、時間がかかり過ぎてできなくなる

それで結局は、当たり触わりのない内容にして行かざるを得なくなります。(だから自分で起業しないと学べないことがたくさんあるんです。)

今回書くことも、その一例で、色々な事情があって、中川さんとの仕事は終わりになりました。一ヶ月かけて、次のステップを模索。オプションは以下のようでした。

1. また一人で仕事をする
2. 立ち上がり直後の小さな会社にファウンダーとして入る
3. ある程度立ち上がっているスタートアップに入る

仕事で知り合った人達や、家族にアドバイスを訊き、自分でもじっくり考え、3 を選択。60人ほどのスタートアップに、エンジニアとして就職しました。理由はこうです。

・自分には、売れる商品を思い付く、という能力(マーケットビジョン)がない
・しかし、一年半の起業経験から、良いマーケットビジョンを見抜く能力は若干ついてきた(ような気がする)
・そこで、良いと思うマーケットビジョンを持っている、小さくて、若い会社で働き、そこで会社と共に成長したい

また、数ヶ月の仕事を転々とするのではなく、一つの仕事にじっくり取組みたい、という気持も芽生えました。両親が日本から遊びに来ていて、一緒に コンピューター歴史博物館 を見学。1960年代からの、古いコンピューターがたくさん展示してあり、自分が小学生のときに初めて触れたコモドールのマイコンなども置いてありました。

最近50年間のコンピューターの凄まじい進歩を見るにつけ、この技術革新の本場に憧れてアメリカに出て来て、勉強し、仕事をしているんだ、ということを再認識。社長あるいは副社長として会社をクロージングして、大金をもうける云々よりも、技術の進歩に、エンジニアとして貢献したい、という気持がよみがえってきました。

起業から、エンジニアに戻って、モチベーションを維持できるか、自分でも心配でしたし、雇う方もかなり心配したようです。しかし、戻ってみたら楽しくて心配はいりませんでした。プロジェクトが明日無くなるかもしれない、物を作っても誰も買ってくれないかもしれない、という心配をしないで、技術的な仕事に打ち込める、という幸せを噛みしめつつ、日々こつこつと仕事をしてます。


 (糸井名生氏のブログ「柳通り便り(http://blog.goo.ne.jp/naomaru1)」より転載)

糸井名生(いとい・なおまる)氏

1973 年生まれ。名古屋大学工学部情報工学科卒。1996年に渡米し、ミシガン大学コンピューターサイエンスの修士・博士課程へと進学。電子認証などのセキュリ ティプログラムに関連する研究でPh.Dを取得。2001年、サンマイクロシステムズへの入社を機にシリコンバレーへ。アクティブカード社などを経て、 2007年4月Itoi,LLCを起業。


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