無意識を使え

Itoi,LLC 社長
 糸井名生(いとい・なおまる)氏

 私は、他のエンジニアと比べると、パソコンの前に座っている時間は短い方だと思います。仕事の重要な部分は、パソコンの前でするものではない、と思っているので。椅子に座って、考え込むよりも、他のことをしているときのほうが、良いアイデアを思いついたり、混乱した考えがまとまったりします。

皆さんも経験があるのではないかと思うのですが、難しい問題があり、パソコンの前で数時間考えたものの解決できず、今日はもうあきらめるか、と帰宅の途についたとたんに、良い方法を思い付く。アルキメデスがお風呂で、王様からの難問の解法を思い付いて、ユリーカ!と叫んだというのは有名ですが、もう少し崇高でない例として、ある相撲取りが、夫婦生活を営んでるときに、新しい投げ技を思い付いた、というのもあります。遠藤周作も似たようなことを書いていましたし、古今東西、例が尽きません。

私は、考え事は無意識にさせる、ということを心がけています。そのために、会社にいるときでも、積極的に散歩に行ったり、自転車に乗ったりします。自動車通勤から、電車通勤に換えた理由の一つも、電車に乗っている時間は、無意識を働かせる貴重な時間だからです(車を運転しているときは、リラックスできないからか、あまり働かないようです)。

コツは二つあって、無意識をいくら働かせても、無い情報は入って来ないので、パソコンの前にいるときに、集中して情報を収集する。また、何の問題について考えるか決めておかないと、思考があっちこっちに行ってしまうので、無意識が働き出す前に、考えるテーマを決めておきます。

たとえば、上司から何か仕事を与えられた場合には、私の仕事は、

1. 指令が来る
2. 散歩に出る - どうやって指令を満たすか考え、計画を立てる
3. パソコンを使うか、同僚と話して、情報収集
4. 散歩に出る - 情報を消化する
5. 作業(コーディング、デバッグなど)が必要であればする
6. 3-5 繰り返し
7. 結果を上司に報告するか、レポートを書く

という感じで進みます。同僚からみると、ぷらぷらと散歩ばかりしている奴だ、と見えるかもしれません。

知り合いの、非常に優秀なエンジニアに、ぺらぺらと話してばかりいる人もいます。おそらく彼の場合、話すことで無意識を使ってるんでしょう。
やり方は人それぞれでも、上手く無意識を使う術を覚えると、仕事がはかどると思います。

 (糸井名生氏のブログ「柳通り便り(http://blog.goo.ne.jp/naomaru1)」より転載)

糸井名生(いとい・なおまる)氏

1973 年生まれ。名古屋大学工学部情報工学科卒。1996年に渡米し、ミシガン大学コンピューターサイエンスの修士・博士課程へと進学。電子認証などのセキュリ ティプログラムに関連する研究でPh.Dを取得。2001年、サンマイクロシステムズへの入社を機にシリコンバレーへ。アクティブカード社などを経て、 2007年4月Itoi,LLCを起業。
現在は、NextLabs, Inc.というスタートアップでエンジニアとしても活躍中。


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