第1回 米国における仮出願制度(Provisional Application)

John Inge Partner

SVJENの新しいスポンサー、シュグルーマイアンの御紹介

Sughrue Mion, PLLC は、Silicon Valley Japanese Entrepreneur Networkの皆様に、これから一年に渡りIPに関するコラムをお届けすることになりました。皆様のビジネス・起業にお役に立つよう、努力して参りま す。
知的財産権にフォーカスした米国内最大の弁護士事務所のひとつであるSughrueの成長をこれまで支えてきたのは、日本の多くのクライアントへの継続 的・包括的サービスと、日本企業の皆様の幅広い分野における目覚しい技術イノベーションの実績です。当法律事務所では、すべての技術分野に関する特許出 願・手続き、あらゆる側面での商標権・著作権、米国全土にわたる訴訟、ライセンス契約、鑑定、知財カウンセリング業務等を提供しています。
カリフォルニア州マウンテンビューにありますシリコンバレーオフィスに加え、30年以上に渡り本社をワシントンD.C.に置くほか、東京オフィスにおいて も弁護士が精力的に業務に携わっております。私自身は、光栄にも15年以上もの間、東京オフィスで活動した後、今夏、カリフォルニア州に移転して参りまし た。知的財産法にとって重要なこれらの3拠点にオフィスを置く上、日米知財の相違を熟知していることにより、シリコンバレーのクライアントに対して優れた サービス・業務を提供する事を可能にしています。

仮出願

今月は導入として、開発サイクルの早期で重要視される仮出願についてお話したいと思います。仮出願をする事により、多大な経費を初期段階でかけずに、技術 イノベーションへの投資をかなり高いレベルで保護する事ができます。また、競合者の発明盗用・侵害を防ぎつつ、市場の検証、資金調達、促進開発の時間の猶 予を持たせることができます。
仮出願は、本出願同様、USPTO(米国特許商標局)に提出するもので、通常の本出願で要求される煩雑な形式を省きながら、且つ、後の本出願の為の有効出 願日を早期に確立することができます。例えば仮出願では、正式なクレーム、宣誓書・宣言書、発明の背景、発明の要約、先行技術説明書が不要な他、図面も手 書きで許可されているなど、かなり大幅な略式での申請が認められています。その上、出願料が現在のところ160ドル、小企業体(関連会社を含め従業員が 500人未満の企業、または非営利団体)であれば80ドルと格安であることも魅力です。

仮出願に必要な基本要項

・米国特許法(35 U.S.C.)第112条1項に則った発明の明細、及び発明の製造・使用方法
・発明の理解に必要な図面
・すべての発明者の氏名と住所
・発明の名称
・弁護士や代理人の氏名と登録番号、及び、その整理番号
・出願担当者連絡先住所
・出願料
・政府機関が出願に所有権を持つ場合は、その説明

仮出願の有効性

仮出願は出願日から1年間有効で延長はできず、審査の対象とはなりません。その為、仮出願により特許が認可されるということはありません。ただ、その後本 出願を仮出願より1年以内にする事ができ、仮出願日に基づき優先権を主張することができます。またその1年間の仮申請中、「特許出願中」の表示を製品に貼 付することは許可されています。
特許公開は本出願とは異なり行われません。また、特許の有効期間は、仮出願日ではなく、本出願日からとなります(本出願日から20年間)。つまり仮出願に よって優先権主張日を獲得し、後からの本出願による特許有効期間開始日は1年先にすることができます。これは特許有効期間の後半で経済価値が上がる、製薬 業界などの分野で重要となります。さらに、仮出願からの優先権を主張しながら本出願で特許認可が下りた場合は、仮出願日にさかのぼって、競合者の発明を先 行技術と位置づけることができます。多くの国で言えることですが、米国で仮出願された特許を日本で申請する場合、米国仮出願日を優先権として主張できま す。



仮出願の落とし穴

仮出願には確かに、上記のような利点がある一方、実際の出願前に頭に入れておかなくてはならない重大な落とし穴もあります。例えば、仮出願で十分に裏づけ られているクレームだけが、後の本出願のクレームとして仮出願からの優先権を主張することが可能です。従って仮明細書の作成には十分に気をつける必要があ ります。
例えば、開示される発明を含んだ論文が間もなく発表されるのであれば、その論文自体を仮明細書として使用したいと考えたくなるものです。しかし科学論文は 普通、ひとつの実施例やひとつの形式など、開示された発明のごく狭い部分だけを含むものであり、発明の範囲はそれよりも広いものです。そのような場合、本 出願のクレームを他の実施例や他の形式に結び付けただけでは、仮出願からの優先権対象とは見なされないのです。最初の出願からの優先権を獲得する事に関し て、欧州の特許庁は極めて厳しいルールがあり、具体的か少なくとも具体的にこの上なく近い裏づけが必要です。
このようなことから、私どもでは、仮出願の明細書は仮出願日の時点で出来るだけ完全なものを書くようにと薦めています。可能性のある改良を含めることも重 要です。そうする事は学会用論文では必ずしも望ましいものではありませんが、仮出願では逆に考慮に入れるべきです。時には実際の改良が論文発表後や仮出願 申請後に行われることもあり、そのような場合、最初の出願の直後に別の仮出願をすることが適切だと言えます。

ご意見、ご提案をご自由にお寄せください

このコラムでは、起業家の皆様が特に関心を持つと思われる、知的財産法における重要かつ最新の話題を毎月取り上げていく予定をしております。広範囲からト ピックを選択することになりますが、皆様にとって最大限に有効なコラムにしていきたく、是非ここが知りたい!と言うような、疑問・ご希望がございました ら、お気軽にお寄せください。連絡は、SUGHRUE MION, PLLCカリフォルニアオフィス(650)625-8100、私John Inge、または、クライアントリレーションコーディネーター、日下部さなえまでお願い致します。

John Inge
Partner


ジョン・R・インジ弁護士(John R. Inge)

シュグルーマイアン法律事務所(知的財産法専門法律事務所)所属、シニアパートナー。専門は、電気/機械工学、インターネット・ソフトウェアの分野の特許 出願・手続き、鑑定、ライセンス契約、特許有効性判断、訴訟及び、知財戦略アドバイス。電気工学と特許法を合わせた業務経験は30年以上に渡り、今現在は シリコンバレーオフィスと東京オフィスで特許法弁護士として活動している。1968年Carnegie-Mellon大学を卒業、Suffolk Law Schoolを1974年に卒業後、15年間日本に在住した。英語、日本語及びフランス語のマルチリンガル。






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