第6回 米国における商標保護

W. Mack Webner Partner

概要

米国の商標法は、世界各国に比べて独特です。実際に、米国の商標法では、すべてのものが商標に成り得ると認識されています。商標に対する唯一の要件は、使 用されている製品またはサービスの源を特定できることです。もちろん、これは、いくつかのものは源を特定できないゆえ商標には成り得ない、という意味であ ります。用語の中には、製品の総称である、つまり用語が製品そのものであるため、登録できない用語があります。たとえば、タイヤに対して「タイヤ」という 用語は登録できません。地理的用語の中にも、用語により、製品の源である地域が特定されるため、登録できない用語があります。たとえば、チーズに対して 「スイス」という用語は登録できません。当初は登録できなかったものの、ある期間 (通常 5 年間)、標章が実質、排他的に使用されるようになったため、弁別性を獲得できる用語もあります。

商標は言葉であっても良いのです。ほとんどの商標は単なる言葉です。Goodyear や Firestone、Ford、Colgate、duPont など、人名の場合もあります。これらの言葉は、特定の製品の源の識別名として弁別性を獲得しています。Kodak や Intel、Microsoft などの造語や、Ivory や Tide、Windows、Target などの一般的な言葉語の場合もあります。

また、商標はシンボルでも構いません。メルセデス車のボンネットに付いている星型の装飾や、マクドナルドのアーチ型デザイン、ナイキのスウッシュは、デザ イン シンボルの商標例です。シンボルは、車のジャガーや衣料品のアリゲータ、保険サービスのオオジカなど、動物の場合もあります。生存している、または亡く なった人物の肖像画や画像も、商標に成り得ます。エルビス プレスリーやサンダース大佐の画像も商標です。

また、米国の法律では、色や香り、形状も源を特定できると認識されています。家の断熱材を示すピンク色は、最もよく知られている色の商標です。フルメリア という花の香りは、糸の商標として初めて登録された香りです。商標として登録されている形状も多数あります。コカコーラ クラシックのボトルやスコッチ ウィスキーのピンチ ボトルは、おそらく最も有名な形状の商標だと思われます。

製品の固有なパッケージを示すトレードドレスも、商標に成り得ます。

米国の商標法の固有な面の一つに、商標権は登録ではなく、使用を通じてて取得されるという事があげられます。他のどの国においても、商標は、最初に登録さ れた標章に付与されますが、米国では、標章に権利が発生する前に、標章が実際に使用されている必要があります。米国では、名前や潜在的な ID を単に考えただけでは、会社や当事者にその名前や IDにおける権利の行使を、実際に製品またはサービスを特定する為に使用される前に許可してはならないとされています。

使用意図

国際社会では最初に登録された標章に権利を認可しています。米国では、それに合わせるため、商標法に対して使用意図の規定を採用しました。連邦法の「使用 意図 (Intent To Use)」条項では、申請者に善意による使用意図がある場合、名前を考えた人物は、連邦政府レベルで、名前、シンボルまたは考案品を保護するために申請で きることが認められています。将来、時々標章を使用したいと思う可能性があると申請者が考えている、または競合が同じまたは類似の ID を使用するのを防止したいと申請者が思っているだけでは、十分ではありません。善意による使用意図を証明するマーケティングまたは事業計画を示す、または 申請後、実際に標章を使用することにより、善意による使用意図を立証できる必要があります。

法律では、使用が発生し、申請者が使用を宣言するまで標章は登録として発行されないと規定されています。申請は、使用に基づき登録のために申請された標章 であるか吟味されます。標章が登録の法令基準を満たし、既に登録されている商標及び出願中の標章とコンフリクトしていない場合に、標章は異議申し立てのた めに公開されます。

異議申し立てのために公開する前に、標章が使用されている場合、申請者は使用を主張する補正案を申請できます。または、標章が公開済みかつ異議申し立てが なかった場合、許可日から 6 か月以内に使用声明を提出する必要があります。米国特許商標局の公報への公開後、30 日間の異議申し立て期間が過ぎると、特許許可通知が発効されます。使用声明の提出期間は、特許許可通知発行後の最初の 6 か月間を含む合計 36 か月、米国特許商標局に料金を支払う事により延長が可能です。

州登録

連邦制度に加え、各州においても商標登録に対して独自の制度があります。正確な標章がすでに登録されている場合、州登録では、通常、確認以上の調査は行わ れません。州登録は、連邦登録より取得手数料が廉価ですが、州登録の保護範囲は、登録者が実際にその標章を使用している州内の地域に限られます。そのた め、例えば、レストランの名前の連邦登録者は米国全体に権利を保持しますが、オハイオ州の標章登録者は、ほとんどの場合、オハイオ州内の実際に標章が使用 されている地域でのみ標章の権利を保持します。連邦登録が州登録より先に取得されていた場合、オハイオ州においても、連邦登録者の権利が優先されます。オ ハイオ州登録者が、オハイオ州のある 1 つの市内でその標章を以前から使用していた場合、連邦登録者は、オハイオ州のその他全域において優先的な権利を保持していると言えます。

複数の州において販売を行っている場合、または商品やサービスが議会によって管理されている場合など、標章を商業に使用する場合は、連邦登録を取得する事をお勧めします。

慣習法の権利

米国の法律では、権利は使用に基づくという認識の上に成り立っているため、商標所有者は、登録せずに連邦登録の権利と同等の権利を保持することができま す。商標所有者が、その標章のその他の使用よりも前に、米国全体においてその標章を使用していた場合、商標所有者の権利は、後から取得された連邦登録より も優先されます。しかしながら、以前から使用を立証する事は容易くありません。裁判所に対し、以前から使用していた事、当該標章において顧客がその使用に 気づいていたことを明確に立証する必要があります。これは、連邦登録における利点です。登録は、登録者の国家権利の一応の証拠と言えます。

連邦登録の過程

通常、最初の手順は商標の検索から始まります。同じまたは類似の商品やサービスに対して、同じまたは類似の標章がすでに第三者によって登録されていないか を判断する為です。検索方法として、検索を専門とするコンピュータ データベース会社を利用するか、商標局で登録および係属中の出願を検索する方法があります。取得しようとする標章のマーケットに対する精通性にもよります が、検索を行う弁護士が必要な分野の検索を決定します。また、コンピュータ データベース会社は、商工名鑑やインターネット ソースで、ドメイン名やコモン・ローの使用を検索します。

検索後、出願書類が作成され商標局に提出され、過去に類似した出願や登録が存在していないか判断するために、審査官によって独自の検索が行われます。ま た、審査官は出願をレビューし、申請手順が正しいか、商品やサービスの説明が米国商標局の基準を満たしてるかを判断します。コンフリクトする出願や登録が ない場合及び標章が商標と成り得るものに関する法律基準を満たしている (総称、商品やサービスの説明、商品が知られている地域を説明する地理的用語では無い)出願に対し、異議申し立てのための公開が許可されます。その登録に よって損害を被ると信じる者は、登録に対して異議申し立てを申請できます。

異議申し立て

異議申し立てとは小裁判手続きのことを言います。この過程では、特定の標章の登録により損害を被ると信じる者が、登録に反対する異議申立通知を提出しま す。異議申立の通常の根拠は、公開された標章により該当の購入市民に商品やサービスの源に関して異議者との混乱を起こす可能性がある事にあります。

米国特許商標局商標審判部 (以下「TTAB」) の前に行われる場合を除き、異議申立は、連邦裁判所での裁判と同様の方法で行われます。陪審員制度や証人喚問はありません。すべての宣誓証言は、宣誓供述によって行われ口述記録書によって提出されます。

TTAB は、いずれの当事者に対しても、損害賠償や弁護士費用請求を与えることはできず、差止めを命令する事もできません。TTAB の唯一の裁判権は、連邦登録に関する商標の発行または継続登録の認可または却下です。

訴訟

商標の使用が、標章の以前からの使用者および/または登録者の善意を傷つける可能性がある場合、以前からの使用者は、連邦裁判所または州立裁判所に提訴します。ほぼすべての訴訟は、連邦裁判所に提出されます。

提訴すると、被告は回答を提出するのに 20 日間与えられます。その後、証拠開示が開始されます。

米国では、証拠開示が訴訟費用の大部分を占めるのが通常です。証拠開示は書面による開示と口頭による開示から構成されています。両当事者は、互いに質問 状・書類および物品の要求を送達する、また他方に特定事項を認めるよう依頼する事ができます。その後、両当事者は証人および当事者の口頭による宣誓供述を 行うことができます。宣誓供述は、一方の弁護士によって行われ、その弁護士は、自分のクライアントの主張を立証するのに役立つ情報を得るために証人に質問 をします。

要求された情報を提供する際、議論が激しい場合、当事者の協力に関して申立を申請できます。往々にして当事者は、略式判決を求める申立を申請します。略式 判決に際し、当事者は訴訟の判決に必要なすべての事実を公開し、紛争を回避する事を宣言します。これにより裁判所は、裁判にて証人供述を行わずして、判決 を下すことができます。

米国において、真実を追求する為の弁護士による訴訟手続き業務に対して、新たに費用が生じます。


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W. Mack Webner 弁護士

シュグルーマイアン法律事務所所属、パートナー。

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