第8回 「起業に伴うビザ知識」開催報告
スピーカー:弁護士 鈴木 淳司氏(マーシャル・鈴木総合法律グループ)
日本人がアメリカで起業しようとする場合に、まず直面する困難のひとつにビザの問題があります。特に昨今、厳しくなる一方のビザ環境のなかで、困難の壁 を突き破るにはどういったアプローチで臨めばよいのでしょうか?第8回ラウンドテーブルは、将来の起業に備えて、エキスパートからのアドバイスや、起業経 験者の体験に学ばんとする約25人が集まりました。
今回は、移民関係で年間500件にのぼる相談が寄せられるという、弁護士の鈴木 淳司氏をJETROサンノゼ・オフィスにお招きし、最新のビザ動向を、起業に際するアドバイスを交えつつお話いただきました。鈴木弁護士は、起業しようと する人には、本来オリジナリティーが備わっている、ビザの問題に対しても、このオリジナリティーをもってアプローチすれば、移民局を納得させることが可 能、と熱く語られ、この後押しに刺激を受けた方々のディスカッションで大いに盛り上がったラウンドテーブルでした。
冒頭で鈴木弁護士は、ビザを理解する上でその根拠となる移民法にはいろいろな要素が絡み合っており、どういったバランス感覚をもって考えればいいかを今回の話からつかみ取ってほしいと述べられました。
◆外国人が企業をたちあげるなら、基本的にはE、Lビザ
会社を設立してHビザ、という例はあるが、必ずしも成功率は高くない、最初の選択肢としては勧められない、というのが鈴木弁護士の見解です。
さて、会社の設立が先か、起業家のビザ申請が先か?結論から言うと会社が先です。E、H,Lビザともスポンサーとなる会社が必要で、移民局はスポンサー 会社がしっかりした会社であるかをみます。その意味で、会社形態として、二重課税の問題はあるものの、税金の申告書(Tax Return)で支出入内容が明確になる、株式会社(Corporation)を鈴木弁護士は勧められます。なお、CorporationにはC- CorporationとS-Corporationの区別がありますが、S-Corporationには外国人株主を認めない等制限事項が種々あり、日 本人が会社設立をする場合に該当するのは、C-Corporationです。会社を登記する場所として、よくデラウェア州がよいといわれていますが、根拠 は薄い、カリフォルニアで起業するなら地元であるカリフォルニアで登記することを勧める、というのが鈴木弁護士のご意見でした。
◆ビジネスプランが決め手
E、Lビザとも、ビジネスプランが必要となります。移民局を説得するには、プランニングの確かさ、現実味のあることが重要なポイントです。移民局は、ビ ジネスで成長するか、プロフィットを出せるのか、そして絶対条件ではないにしても、アメリカ人をどれだけ雇用できるか、といったことをみるのです。収支が どうなるのか、自分の考えをはっきりさせておかないと、説得はできません。鈴木弁護士からの「ビザ取得を成功させるためには、現在プロフィットが出ていな いにしても、こうすればプロフィットが出せそうだなと移民局を納得させるような精度の高いビジネスプランが必要」とのアドバイスに深く頷く参加者の姿が印 象的でした。
◆永住権なみの権利をもつという、Eビザを学ぼう
Eビザは対象国が限定されており、国によって特殊性があるため、こういった事情に精通した弁護士に相談することが成否の鍵となるでしょう。技術によって は低い資本でも認められるケースがあり、そこは弁護士の腕とセンスが問われるところです。なお、審査は、在日アメリカ大使館または領事館で行われます。
スポンサーとなる会社の所有権について、50パーセント以上は、日本企業または日本人が所有していなければなりません。この会社の所有者は、アメリカ国外に住むか、もしくはEビザ(永住権では不可であることに注意)でアメリカに住んでいることが条件となります。
通商(E-1)・投資(E-2)、どちらも、主眼は「アメリカに貢献するのか?」いうこと。そして、例えばアメリカ有力企業との取引の注文書といった書類の形でその貢献の度合いを提示できれば効果的です。
投資の定義は曖昧で、法の解釈には幅をもたせてあります。投資は現金だけとは限らず、コンピュータ、車といった現物や賃貸オフィス、また、知的財産も考 えられます。そして、投資を証明できる書類を用意することが大事です。現金を口座においておくよりも、リスクをとった設備投資をしたことを写真で示すなど する方が、むしろ評価されています。
◆Lビザ、そしてHビザ
Lビザには、スポンサー会社に対する「投資要件」がなく、濫用されている現状です。ただし、ビザの審査ではスポンサー会社の税金の申告書で支出入や税金 の支払の状況を見て、どれだけ税金を支払う能力があるか、しっかりした会社かどうかがチェックされています。 Hビザでも、スポンサー会社に求められるのは税金の申告書で、過去の支出入を見て、果してビザ申請者に給与を支払えるだけの収入がある会社か判断されるの で、会社を設立してHビザ、というシナリオは難しいかもしれません。
最後に鈴木弁護士は、外国人がアメリカで起業家としてやっていくには、オリジナリティーで勝負できること、ネイティブと競える力が必要、と強調されまし た。そして、プロフィットを出すビジネスをつくっていく姿勢で移民局を納得させることが今は求められているのだというアドバイスで締めくくられました。
この後、鈴木弁護士の明快かつ熱意のこもったトークに触発されて、待ちきれないとばかりに活発な質疑が交わされ、ラウンドテーブルならではの実地の情報 交換で大いに盛り上がりました。ご参加の方々のビザ事情はさまざまで、ビザの問題に関してモデル・シナリオを一通りに描ける訳ではないことがわかりまし た。質問・疑問は多岐にわたり、「現在はHビザで雇用される立場だが、起業する際にビザの移行をどう図ったら?」、「会社を設立してからプロフィットを出 すに至るまでには時間がかかるはず、この期間はどうしたら?」といったものから、「アメリカ人をContractで雇う場合も評価されるのか?」、「ビザ 申請の段階でアメリカ人を雇用するとして、申請が通らなかった場合を考えた雇用契約は?」、さらには「日本から人を雇い入れたいが」、といった雇用する立 場から出る問題もあげられました。また、相当額の投資と認められる投資額が近年とみに高くなってきたことに対して、「少ない資金で起業することはできない ものなのだろうか?」という投げかけもありました。
今回は、初めてラウンドテーブルに参加する方がいつもに増して多く、シリコンバレーで"起業"という志を同じくする人々のネットワークは更に広がりつつ あります。仲間とのネットワーキングに大いに刺激された参加者のおひとりからは「こんなに有意義な日になると思わなかった。出てよかった。次回からも、ぜ ひ参加したい」という感想を頂きました。その興奮は会終了後も止まらず、続いての懇親会では、スタッフ・参加者一同で将来の起業に向けての熱い想いを語り 合いました。また、次回ラウンドテーブルに向けても貴重なフィードバックを頂き、今後も起業家および起業家志望の皆様に有意義なラウンドテーブルを経験し ていただけるように、スタッフ一同、改善の努力を続けようと気持を新たにしています。
(文:木村恭子)
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